ホンダ「スーパーカブ」の立体商標が商標登録

スーパーカブ

iRify特許事務所・弁理士の河合光一です。

この記事を書いているのが、2014年6月20日。残念ながら、サッカー日本代表がギリシャ相手に0-0のドローに終わってしまった日です。

私はボランチの山口蛍選手に注目していますが、本田圭佑選手に期待している方も多いのではないでしょうか。

今回はホンダ繋がりで、本田技研工業株式会社の「スーパーカブ」の立体商標が商標登録されたという話題について触れ、簡単に解説します(参照記事)。

立体商標とは?

「商標」は自分の商品・サービスを他人の商品・サービスから区別するためのマーク(需要者が商品・サービスを選択する際の目印となるもの)のことをいい、文字商標、図形商標、記号商標、立体商標、文字と図形が結合した商標、文字と記号が結合した商標など、様々な種類があります。

立体的形状(三次元の物の形状)であっても、需要者が商品・サービスを選択する際の目印となり得ることは文字商標などと違いないので、立体商標も商標登録の対象として認められているのです。

実際に立体商標として登録されている例(登録商標)を以下に挙げます。

大隈重信像
大隈重信像
【登録番号】 第4164983号
【権利者】 学校法人早稲田大学
【指定商品・指定役務】 印刷物,技芸・スポーツ又は知識の教授 etc
ヤクルト(乳酸菌飲料)の包装用容器
ヤクルトの包装用容器
【登録番号】 第5384525号
【権利者】 株式会社ヤクルト本社
【指定商品・指定役務】 乳酸菌飲料
コカ・コーラの瓶
コカ・コーラの瓶
【登録番号】 第5225619号
【権利者】 ザ・コカ-コーラ・カンパニー
【指定商品・指定役務】 コーラ飲料
ペコちゃん人形
ペコちゃん人形
【登録番号】 第4157614号
【権利者】 株式会社不二家
【指定商品・指定役務】 菓子及びパン,飲食物の提供 etc

例えば、店頭にペコちゃん人形が置いてあれば(ペコちゃんのキャラクターを見れば)、「不二家のお店だな」と思いますよね。これは、ペコちゃん人形(ペコちゃんのキャラクター)が広告となり、商品の出所を示しているわけです。

立体的な形状であれば、商標登録が認められる?

立体的な形状ならば、どんな商標でも登録が認められるわけではありません。

ここでは詳しく述べませんが、立体商標の登録要件は商標法で規定されており(商標法3条1項3号、4条1項18号)、特許庁は、権利取得を希望する商品の形状そのものの範囲を出ないと認識されるにすぎない商標は、商標登録を認めないとしています。

したがって、商品自体の形状が商標登録されるのは限られた場合となり、通常であれば、かなり特殊な形状である場合に限って、立体商標として出願すれば登録される可能性があるということになります。

実際、本田技研の「スーパーカブ」の立体商標は、審査段階では商標としての特徴がない(自他識別力がない)ことを理由に登録を認めないという判断がされています。

この登録を認めないという審査官の判断に対し、本田技研が拒絶査定不服審判を請求して争った結果、商標登録が認められたのです。

1958年から約半世紀にわたって発売され、外観デザインなどに大きな変更がなく、その形を見れば一目でホンダ製と識別できることが商標登録の決め手になったようです。
日本のほか、世界160カ国以上で販売されており、今年3月までの累計販売台数は8700万台を超えていることも評価されたのでしょう。

このような背景があるので、「スーパーカブ」の立体商標が商標登録されたことがニュースとなっているのです。

商品自体の形状についての立体商標の商標権の効力

「スーパーカブ」の立体商標の商標登録が認められたことによって、これと似ているバイクを勝手に製造・販売できなくなるという記事が散見されますが、単純にそう言えるかは疑問です。

「スーパーカブ」と似ているバイクを「商標として使用」すれば、もちろん商標権侵害となりますが、どのような場合に「商標として使用」しているかは争いになると思われます。
また、本来、物品のデザインは意匠権で保護されるものなので、この点も問題になりそうです。

もっとも、通常は商標登録を認めないという特許庁の高い壁を乗り越えて権利化できたわけなので、争うときに有利に働くでしょう。

また、多くのメディアで取り上げられることで、ますます有名になると考えられます。

最後に、今回の事例は、非常に有名なホンダの「スーパーカブ」であるがゆえの例外とお考えください。
通常、商品自体の形状を保護したい場合は、意匠登録(意匠権の取得)を検討することになります。

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