ロゴ商標と文字商標、どちらが有利か?

こんにちは。iRify国際特許事務所・弁理士の河合光一です。
今回は、よく受ける質問をテーマにしました。
「そもそもロゴ商標って何?」っていう方もいるでしょう。
簡単なことから解説していきます。

商標とは?

そもそも商標登録の対象とならなければ商標登録できませんから、有利も不利もありませんよね。
商標法では、「商標」を以下のように定義しています。

「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状もしくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合であって、~~~~~~(商標法第2条第1項)

よくわかりませんか?では、具体例を示しましょう。

<文字商標の例>

八重の桜
【登録番号】 第5457498号
【権利者】  株式会社NHKエンタープライズ

連続テレビ小説あまちゃん
【登録番号】 第5526962号
【権利者】  株式会社NHKエンタープライズ

<図形商標の例>

くまもん
【登録番号】 第5540074号
【権利者】  熊本県

<記号商標の例>

武田薬品
【登録番号】 第54111号
【権利者】  武田薬品工業株式会社

<立体商標の例>

大隈重信
【登録番号】 第4164983号
【権利者】  学校法人早稲田大学

<文字と図形が結合した商標の例>

ハローキティ
【登録番号】 第3289976号
【権利者】  株式会社サンリオ

<文字と記号が結合した商標の例>

NIKE
【登録番号】 第1517133号
【権利者】  ナイキ インターナショナル リミテッド

文字商標は、文字だけで構成されている商標のことです。
ロゴ商標は、商標法で定義されているわけではありませんが、一般的には上記の図形商標、記号商標、文字と図形が結合した商標、文字と記号が結合した商標などの総称として呼ばれます。
文字商標と立体商標を除いたものがロゴ商標と呼ばれているのだと理解いただければ十分です。
なお、デザイン文字(飾り文字)で構成されている商標は、文字商標ではなく、ロゴ商標と呼ばれることが多いです。
本記事においても、「文字商標」にはデザイン文字(飾り文字)で構成されている商標は含まないと考えてください。
上記の例からわかるように、文字商標はもちろんロゴ商標も商標登録の対象となります。

商標権の効力(専用権と禁止権)

商標登録が認められると、権利を取得した商品やサービスについて、その商標を独占して使用することができるようになります(商標法第25条/専用権)。
商標権者以外は、勝手に使用できなくなるわけですね。
また、他人は登録商標と同一の商標だけでなく、類似している商標も勝手に使用することができません。
これは、商標権の効力が登録商標と似ている範囲にまで及ぶからです(商標法第37条/禁止権)。
文字商標とロゴ商標のどちらで登録すべきか悩む方が出てくるのは、商標権には専用権だけでなく禁止権の効力もあるからなのでしょう。
商標権の効力を理解していただくために、具体例を用いて説明します。
例えば、下記の3つの登録商標があったとします。
権利を取得しているサービスは、区分45の「商標出願・商標権の調査」としましょう。

<例1:文字商標>

JAZY文字商標

<例2:図形商標>

JAZY図形商標

<例3:文字と図形が結合した商標>

JAZY文字と図形が結合した商標

この場合に、他人が勝手に以下の商標を使用し、「商標出願・商標権の調査」をビジネスとして行うとどうなるでしょうか?

<他人の使用例1>

JAZY

「例1:文字商標」に対しては、専用権の侵害となります。
「例3:文字と図形が結合した商標」に対しては、禁止権の侵害となる可能性が高いと考えられます。
一方、「例2:図形商標」の侵害とはなりません。
似た要素がないわけですから、これは当然ですね。

<他人の使用例2>

JAZY

簡単ですね。さくっといきましょう。
「例2:図形商標」に対しては、専用権の侵害となります。
「例3:文字と図形が結合した商標」に対しては、禁止権の侵害となる可能性が高いと考えられます。
一方、「例1:文字商標」の侵害とはなりません。
そうすると、文字と図形が結合した商標の効力が最強で有利だと思いますか?
実は、そう単純ではないのです。

<他人の使用例3>

JAZY

「JAZY」の語尾の「Y」を「V」に変えて、その「V」が「Y」にも見えるように小細工して使用しているパターンです。登録商標に需要者の信用が蓄積されてくると、その信用にフリーライド(ただ乗り)しようという輩が出てくるものです。 そっくりそのまま真似しては確実に商標権侵害となるので、巧妙に似せてくるわけですね。

「使用例3の商標」が商標権侵害となるか否かは、正確には裁判で実際に争わないとわかりません。とはいえ、「例1:文字商標」であれば、他人が「使用例3の商標」を勝手に使うことを差し止められる可能性は十分にあります。

文字商標で登録できたということは、文字そのものに商標権としての効力があるということがはっきりしています。 そのため、外観(見た目)が相紛らわしいとして、「例1:文字商標」の侵害であると主張することは十分に可能です。

では、「例3:文字と図形が結合した商標」ではどうでしょうか?

商標権侵害の判断では、「登録商標」と「他人が勝手に使用している商標」とを比較することになります。 ここで、商標法は、「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない」と定めています(商標法第27条)。

そのため、「例3:文字と図形が結合した商標」では、あくまで「蝶の絵」と「JAZY」の文字を含んだ全体が「登録商標」となるのです。 「蝶の絵」あるいは「JAZY」単独では「登録商標」と言えません。

したがって、「例3:文字と図形が結合した商標」が「使用例3の商標」の使用を差し止めることができる可能性は、「例1:文字商標」に比べて低くなると考えられます。

<他人の使用例4>

JAZY

絵心が皆無で申し訳ありません(笑)
実際には、もっと巧妙に模倣していると考えてください。
これも正確には裁判で争わないとわかりませんが、「例2:図形商標」の侵害とはなっても「例3:文字と図形が結合した商標」の侵害とはならないという結論になることもありえます。
つまり、文字と図形が結合した商標の効力は万能ではないわけです。

文字とロゴ、どちらで商標登録すべきか?

登録する商標を考える場合、有利かどうかよりも大切なことがあります。

それは、実際に使用する形で登録するということです。 継続して3年以上日本国内で「登録商標」を使用していないと、せっかくの商標登録が取り消されてしまう可能性があるからです(商標法第50条/不使用取消審判)。

ここでいう「登録商標」には、願書に記載した商標と完全に同一の商標だけでなく、社会通念上同一と認められる商標も含まれますが、どういった商標が「社会通念上同一と認められる商標」となるかは必ずしも明確ではありません。 そのため、実際に使用する形で登録するのが安全なわけです。

実際に使用するのが「例3:文字と図形が結合した商標」なのであれば、この形で登録すればよいでしょう。 特許庁へ提出する書類(願書)も1通で済むので費用を抑えることができます。 ただし、「例3:文字と図形が結合した商標」で登録したのに、実際には「蝶の絵」もしくは「JAZY」単独でしか使用していなければ「登録商標」を使用していないことになり、不使用取消審判によって商標登録が取り消されるリスクを抱えることになるので注意してください。

よって、「蝶の絵(ロゴ)」や「JAZY(文字)」をそれぞれ単独で使用する場面が多々あるのであれば、それぞれ別個に商標登録することをお勧めします。

別個に登録すると「蝶の絵(ロゴ)」と「JAZY(文字)」を組み合わせて使用しなくてもよいので、使い勝手がよくなります。
また、「蝶の絵(ロゴ)」と「JAZY(文字)」とを組み合わせて使用する場合も、組み合わせ方は自由です。

例えば、
JAZY でもOKですし、
JAZY でもOKです。
時代に合わせてパッケージデザインや看板などを変化させたい場合や、商品やサービスの違いに応じて異なるデザインを採用したい場合には、別個に商標登録しておくと便利ですね。
この場合、費用が2件分必要となるのがデメリットでしょうか。
なお、「例3:文字と図形が結合した商標」で登録した場合は、「蝶の絵」を「JAZY」の左側に配置したものだけが「登録商標」となるので、それぞれを別個に登録した場合に比して使い勝手が悪くなります。

ロゴ商標と文字商標のまとめ

文字だけで商標登録した場合のメリット

・文字単独で商標権としての効力を有することが明確になる。
・ロゴ(図形や記号)と組み合わせて登録した場合に比して、文字の禁止権の範囲が広くなる可能性がある。

ロゴ(図形や記号)だけで商標登録した場合のメリット

・ロゴ(図形や記号)単独で商標権としての効力を有することが明確になる。
・文字と組み合わせて登録した場合に比して、ロゴ(図形や記号)の禁止権の範囲が広くなる可能性がある。

文字とロゴ(図形や記号)を組み合わせて商標登録した場合のメリット

・文字とロゴ(図形や記号)の両方について、ある程度保護を受けることができる。
・文字とロゴ(図形や記号)をそれぞれ別個に登録するより費用を安く抑えられる。

ご注意

今回の記事は、あくまで一般論です。 個別具体的な商標についてどのような形で登録するのがよいのかは、弁理士など専門家にご相談することをお勧めします。なお、特徴のない文字だけでは商標登録が認められない言葉があります。
例えば、商品「りんご」に「アップル」(∵普通名称)、商品「鉛筆」に「赤色えんぴつ」(∵商品の内容を説明しているに過ぎない/記述的商標)等が該当します。
この場合は、その言葉にロゴ(図形や記号)を組み合わせたり、文字をデザイン化したりして、商標登録することになります。
なお、「記述的商標」については、過去の記事をご覧ください。
[ 登録できない商標 ~記述的商標(商標法3条1項3号)~ ]

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