新しいタイプの商標 TPP対応のため「音」や「動き」も保護対象へ

商標、音や動きも認定

特許庁は企業のロゴマークなどを保護する商標法を抜本改正する検討を始めた。商標として保護する対象を「文字」「記号」「図形」だけでなく、CMで流れる企業名の「音程」やロゴの「動き」、製品に付いているマークの「位置」などにも広げる方針だ。欧米はすでに商標登録を広範囲に認めている。
日本も環太平洋経済連携協定(TPP)への交渉参加など自由貿易の加速に合わせ、知的財産の保護に力を入れる。

2011年12月13日付夕刊・第1面【日本経済新聞】

日経新聞13日付夕刊

日経新聞の13日付夕刊で、商標に関する大きなニュースが1面トップに掲載されました。 ―見出しは、「商標、音や動きも認定」。

キーワードは「新しい商標」と「TPP対応」です。

商標関連の話題で今一番ホットなニュースなので、これからしっかりと解説をしていきたいと思います。今なぜ、「新しい商標」なのか?一緒に考えていきましょう。

TPP参加による国際的なスタンダード化の流れ

今、世間を騒がしているTPP問題。
―ヒト、モノ、カネの国内外の行き来を活性化させて、日本経済のグローバルな展開と内需の改革を目指す。 お題目はさまざま唱えられていますが、TPP参加問題は、今、日本を二分する大論争に発展しています。

特許庁は、2013年の通常国会に商標法の改正案の提出を目指しています。 日本がTPP交渉のテーブルにつけば、商標制度を“国際標準”に合わせるよう、相手国から求められることは間違いないでしょう。 その前にあらかじめ商標法の改正をしておきたいというのが特許庁の考えなのです。

国際標準? 「新しい商標」ってなに?

立体商標・不二家「ペコちゃん・ポコちゃん人形」
◆日本の現行商標法がカバーしている範囲

現状、日本の商標法で登録できるものは、「文字」「図形」「記号」や「立体的な形状」などに限られています。「文字」や「図形」、「記号」から図案化された企業、商品のロゴなどは、普段の生活でもよく目にしますよね。

「立体的な形状」の商標というのは、その名のとおり立体的な商標のことです。 わかりやすい例を挙げると、不二家の「ペコちゃん・ポコちゃん人形」や、日本ケンタッキー・フライド・チキンの「カーネル・サンダース立像」などがあります。

◆「新しい商標」が新たにカバーする範囲

法改正により権利の範囲が拡がる「新しい商標」。
具体的に、新たに商標登録として認められるのは、

  • 「音」……CMで流れる社名や製品の音程など
  • 「動き」……テレビやパソコンの画面上でのロゴマークの動き方
  • 「色彩」……企業がユニホームなどに使ってイメージカラーとする色
  • 「位置」……統一的なデザインを製品の特定の場所に施す位置
  • 「ホログラム」……見る角度によって色や形が変わるホログラム

などがあります。 保護する商標の範囲が大きく拡がっているのがわかりますね。

グローバル化の流れの中で、知的財産保護の重要性はますますUP!

自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)、そして、TPP交渉。 ヒト、モノ、カネの自由化に向けてのグローバルな動きが、今、世界では展開されています。

自由化とは、言い換えれば「競争」です。 国際社会で「競争」するにあたって、まずは自らの権利をしっかりと保護しなければなりません。

商標とは言わば企業の顔。
「新しい商標」の法改正案には、“権利の範囲を拡大することで企業の利益を広く保護する”、という意図があるのです。

さらに、日本の特許庁に出願するだけで世界各国への同時登録ができるようにもなり、手続コストが減少するというメリットなどもあります。

「新しい商標」に対する慎重論

一方で、この「新しい商標」に対して、慎重な意見もあります。

  • 新たに権利の範囲となった「色」や「位置」などは、よほど慎重に審査しないと実務の上で大きな弊害を起こしかねない。
    (極端な話、ジャイアンツ・カラーなどで登録されたとすると、あの“オレンジ色”が権利化されるということなのですから!)
  • 権利の範囲拡大とともに、権利として認めるかどうかの審査にかかる当局のコストも増大。登録を目指す権利者のコストも増える。
    (権利が拡大すれば、それを獲得しようとする権利者も増えますし、その権利によって制限を受けるユーザーも増えますよね。それだけ、世間に及ぼす影響も大きくなるということです)
  • サウンドロゴ(「音」)の権利については、著作権で保護するなり、悪質な競業者に対しては不正競争防止法によって排除するなりすればよいのでは。
    (既存の法制度の範囲内で対処しようとすると、こういった手もひとつの案ですね)

自由化の流れと権利の保護―今後の動向を慎重にうかがっていきましょう

国際的なスタンダード化は、たしかに今の世の中の大きな流れのひとつです。
しかし、そもそも、商標制度そのものは、それぞれの国や地域で個別的な発展を遂げてきたものなのです。

“国際標準”と“それぞれの国の標準”。 バランス感覚が求められる難しい問題ですね。今後の動向に注目していきましょう。

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