中国商標の現状

中国商標登録

中国商標登録の現状

1.中国における商標出願の現状

2008年に国家工商行政管理総局商標局(以下「商標局」という)が受理した商標登録の出願件数は69万8000件。うち国内の商標登録出願が59万件で、国外出願者が中国で行った商標登録(マドリッド協定及び同協定議定書に基づく国際登録を含む)出願は前年の10万3000件と比べて4.85%増(5000件増)の10万8000件に達しており、引き続き比較的速いペースで増加している。

また、2008年に商標局が登録を認定した商標数は40万3000件で、中国の登録商標件数は合計344万1000件に達した。外国企業が国際事務局を通じて行った商標登録の出願件数は前年比4.9%増の1万7343件(複数区分同時出願)で、4年連続の世界1位となった。累計出願件数は13万1801件(複数区分同時出願)である。

一方、国内企業が商標局を通じて行った国際登録の出願件数は同12.7%増の2,059件で、累計出願件数は8,453件(複数区分同時出願)に達した。

2.中国商標出願における日本商標の出願現状に関する情報

国家工商行政管理総局は4月に、商標局と商標評審委員会により商標管理、商標異議およびその審判、商標争議案件で新たに認定された馳名商標は390件あったと発表した。

これにより、以前の1,234件に加えて、行政ルートにより認定された馳名商標は1,624件に達した。

このうち、中国企業が登録人であるものは香港の11件、台湾の8件、マカオの1件を含め全体の94%にあたる1,526件で、外国の権利者によるものは同6%の98件となっている。外国商標のうち、日本は21件、資生堂、JVC、日産、シャープ、ニコン、カシオなど日本企業各社の商標が含まれていた。

3.中国国内における商標冒認出願に関する現状

 

近時、中国では、外国の有名なブランドやコンテンツ等を、第三者が商標として「冒認出願」する事案が増加しており、大きな問題となっている。

すなわち、中国では、インターネット等を通じて、外国のブランドやコンテンツ等を知った者が、中国では当該ブランドやコンテンツ等がまだ商標登録出願されていないことを奇貨として、先に商標登録出願してしまうといったことが、非常に起こり易くなっている。

中国の商標法は、日本等多くの国の商標法と同様に、「先願主義」を採用している(29条、7章等)。

先願主義の下では、既に商標を実際に使用している者であっても、他の第三者が先に当該商標を出願して登録を受けてしまうと、もはや、同一又は類似の指定商品では当該商標の登録ができなくなるほか、もし登録名義人の許諾を得ずに当該商標を使用すると、商標権侵害を理由に訴えられることになりかねない。例えば、当該商標を付した商品を中国に輸出・販売しようとしても、商標登録者により販売等を差し止められたり、損害賠償を請求されたりするおそれがある。

さらには、商標登録者から、当該商標を法外な値段で買い取るよう要求してくるおそれもある。

4.中国において日本商標が冒認登録される案例

 

中国のある企業は2003年に「青森」を商標として出願した。日本の青森県はこれに対して異議申し立てを行ったので、当該商標の登録が阻止された。

日本貿易振興会(ジェトロ)の調査によると、中国では、日本の30府・県・政令指定都市の名前が商標として出願され、その一部は登録になったとのことである。

三重県松阪市は06年、同地特産の「松阪牛」を中国で商標出願しようとしたが、「阪」の字が違う「松坂牛」という商標が中国企業によって先に出願されていることがわかった。

1999年11月、株式会社良品計画(以下「日本良品」と称する)が中国で25類などにおいて商標「無印良品MUJI」を出願したが、25類の商標は、香港企業の盛能投資有限公司(以下「JBI社」と称する)が類似商品において商標「無印良品」と「MUJI」を先行出願し、且つ登録になったという理由で中国商標局に却下された。

商標権だけではなく、市場経営まで、日本良品は直接な影響が与えられてしまった。JRI社が中国広州、深セン、瀋陽、長春、大連、北京などにおいて「無印良品」商標を有する服装の販売店を開設して、その店のスタイルも日本良品の販売店と類似している。その影響で、日本良品が中国大陸におけるNo1.店、上海店が2005年に開業した以来、「無印良品」のブランドで主な商品を販売することがなかなかできなくなっている。

【その後の情報】著名商標扱いで香港の会社の商標が取り消され2006年秋から衣服の販売も始めたようです。

5.中小企業でも中国商標出願の必要がある

中国商標法が、商標登録の先願主義を採用している以上、外国の有名なブランドやコンテンツ等の冒認出願の問題が発生することは、今後も不可避である。

一旦、日本企業が冒認出願の被害に遭えば、中国ビジネスに与える悪影響は極めて大きい。しかも、冒認出願商標が登録されてしまうと、それを取り消すためには、多くの時間的・金銭的・労力的コストがかかるだけでなく、最終的に日本企業が商標を取り戻すことができるとは限らない。
そこで、事後的対策よりも、事前的対策により冒認出願の出現を防止できれば、それに越したことはないといえる。

まず、当たり前のことであるが、中国で商標の出願・登録をきちんと行うことである。中国での事業展開を想定している日本企業は、日本での商標出願だけでなく、中国での商標出願も行うことが重要である。

日本での事業展開の状況を見ながら中国での対応を検討するという選択肢もあるが、日本の情報はインターネット等を通じてすぐに中国に伝わっている現在の状況に鑑み、日本での事業展開と合わせてグローバルな戦略を立て、中国において適時に必要な商標出願を行う体制を整備しておくことが望まれる。

とくに香港・マカオ・台湾において、ブランド展開・キャラクター展開をしていく場合は、これらの地域だけでなく、中国大陸でも商標登録出願を行う必要がある。

なぜなら、香港・マカオ・台湾と中国大陸は、法制度は異なるが、1 つの中華文化圏として捉えることができ、香港・マカオ・台湾のいずれかの地域で有名になった日本のブランドやキャラクターは、同じ中華文化圏である中国大陸においても、すぐに有名になる可能性があり、「冒認出願」を行う第三者が出現する可能性が非常に高いといえるからである。

【日本JETRO北京センター知的財産部HPより】

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